Skill_S02 of Rusutsu

☆ルスツエリアのソアリング技術と、クロスカントリー技術

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サーマルソアリング

サーマルブロー(熱上昇風)

サーマルとは、太陽の日射しで地面が暖められ、その場の空気が熱膨張し、軽くなった空気の塊が上昇していく気流です。
ちょうど鍋の中の中央で、コンロで温められた水が上昇して上がっていくのに似ています。
例えば畑などの地面が暖まって、その場の空気が暖められて、熱膨張した軽い空気が上昇を始めます。空気が上昇した所に次の空気が入り込んで連続的な上昇気流帯ができ、有る程度風に流されながら、一般的に数百メートル上昇していきます。(ルスツでは春先に高度2000メートルを超える事も時々あります)
この上昇風は多くの場合、5分から15分くらいの間隔で、断続的に上昇を繰り返します。
離陸前の山頂でサーマルブローの間隔や、着陸場と山頂の温度差を観察し、その日のサーマルコンディションをイメージします。(温度差が大きい日は、上昇下降風の対流が激しく起きるのです。)

グランドサーマルソアリング

地上から出るサーマルを探り当ててソアリングするのは、グライダーを操るパイロットにとってこの上ない快感です。技術的に難しいので、上げたときの快感は壮快です。
リッジソアリングで上昇し、高度が取れたら、山から前に出ていってサーマルをいつも探し回り、センタリング(サーマルの中心を探るように小さく旋回をつづける技術)で上昇してみましょう。

サーマルが出やすい条件をいくつかお話しします。

基本的には乾いていて、太陽の熱を吸収している所を探すのですが、たとえばアスファルトの大きな駐車場などは、その周りと大きな温度差ができていて、薄曇りの日でもある程度のサーマルが断続的に出ています。
土の乾いている畑、林の手前や、地形のくぼみで風がよどんで地熱がたまりやすい所。山の斜面には、峰と沢とがありますから、風の向きをイメージして、日のあたっている沢から上がってくるサーマルも、パラグライダーは利用出来るのです。
サーマルは、一度上昇を始めると、上昇風が連続するコラムサーマル(一般的にエネルギーの有るのはほんの数分間ですが、連続したサーマル)に成りやすいです。僕たちが一番利用するのがこのコラムサーマルです。

春先、高い山に残雪があると、山から下降気流が滑り降りてきて、平地の広い範囲で上昇気流になっています。もっとも分かりやすくクロスカントリーのねらえる季節なのです。

サーマルが畑から出ている時、畑をはずして沢地に入ると、下降気流になっている事が多いです。
冬になると反対に、一面が気温の上がらない雪原になりますから、林が熱を蓄えたりします。川もある程度の幅であれば熱源です。どちらも気温の低く日差しの強い日がねらい目です。
冬の平地のクロスカントリーフライトは、雪原をさけ、木が生えている所に沿って飛ぶ事で、沈下の少ない飛行ができたりします。

夏の話に戻りますが、上昇気流のたくさんある日は、下降気流もたくさん有ります。下降気流に入ったら、すぐにUターンして戻りましょう。(下降気流はサーマルと違い、広い範囲であるのです)
大きな下降気流帯から戻ることが出来たなら、一度その地形を観察してください。下降気流が有ることは、取りも直さずそのすぐ近くに上昇気流が有るためにそうなっていることに気がついてください。下降気流の風上側に上昇気流が有る確率が高いと言われていますが、上昇気流が出る所は、地形やサーマルの熱源を観察すれば分かります。迂回経路が何キロも遠回りでも手堅くコースを変更します。降りてしまわないことが大切なのです。(鉄則)
下降気流を通過する時は、一般的に高度ロスを少なくするため、アクセルを踏んで素早く脱出します。
沈下を少なくしようとブレークコードを引くことで、下降気流帯から出られるまでの時間が掛かり、
結果的に高度ロスが大きくなると言われています。
夏の大きな川は下降気流です。ある程度の川幅が有ると、風向きによっては海風を最初のエネルギーにして下降気流が繰り返され、河口から20㎞以上も海風のように内陸に入ってきます。

補足として、

夏、沼や湖の中心部には、マイナス5メートル以上の下降気流(ダウンバースト)が勢いよく落ちている事があります。水の入った水田も同じです。安易に通過しないで下さい。

サーマルハンティング

サーマルは、風の影響で、上昇しながら少し風下に流されています。また、サーマルの周りは、わずかに気流がみだれて、とくに風下側には、巻き込まれる乱気流が少しあります。
風下側からサーマルに入っていくと、この乱れた気流を通過するので、その先のサーマルを感じる事がよくあります。

橇負山のサーマルは、草があまり延びていない時期のハンググライダーやパラグライダーの着陸場、
などがねらい目です。畑に野菜が育っていない春から夏にかけては、どの畑もサーマル源です。南風や南東の風の日は、南東の畑や道の駅の駐車場からおいしいサーマルが出ます。周期的に上昇していますから、何度も探しに行きましょう。
(リッジソアリングで上昇して探しに行き、探しきれなかったら斜面に戻って上げ直します。)

薄曇りのコンディションでも、どこが一番上昇気流の可能性があるか観察し、たとえ上がらなくても沈下の少ないはずのコースを選びます。
そのことが結果的にクロスカントリーフライトにつながります。

ちなみに雨上がりの水蒸気があがっている畑を何度もトライしたことがありますが、僕は一度もサーマルに当たったことがありません。
乾いている所だけをねらうのが良いようです。

ルスツでは水田がありませんが、水の入った水田地帯では、たとえ薄曇りでもアスファルト道路にはっきりとサーマルが出ます。着陸場まで届きそうもないときなど、道路に沿ってコース取りをすることで信じられないほど距離を伸ばすことがよくあります。(電線に気をつけてネ)

ほどよい積雲が出ている日にサーマルで上昇し、雲底まであげることが出来たなら、積雲の色と形でコース取りを考えます。
(雲底ほどの高度がとれると、地上から上がってくるサーマルの位置が分からなくなるので、探し当てる確率が格段に悪くなるのです。情報量の多い雲の位置と形と色で判断してコースを決めるのです)
クラウドストリートはそのままコースを決められますが、積雲を渡り歩くときには、積雲の風上側だけを使います。積雲の風下側に有る尻尾のようになっている側は上がりません。本当は中央部に一番吸い込みがあるのですが、パラグライダーには危険です。
吸い込まれてしまうと、周りが真っ白になって、真下だけがまーるく小さく下界が見えました。その後はもう・・・(危険なことはやめよー)
積乱雲クラスになると、中央部に強力な上昇風があるのですが、雨上がりの湿度の高い日には、その高い所で冷やされた水蒸気が雨となって下降気流と混ざり合い、上昇気流帯であった積雲の中央部から強力な下降気流をともなって雨が落ちてきたりもします。(大きな積雲には近づかないでね)
フルストールのマヌーバーを経験しているパイロットでなければ、パラグライダーは積雲にはちかづいてはいけません。
ハンググライダーはけっこうアタックできますが、身の危険を感じるような飛び方はやめましょう。

豆知識パラグライダーの潰れについて

サーマルや積乱雲による乱気流を含めて、パラグライダーが潰れを起こす原因をお話しします。

パラグライダーの翼は、厚さが約0.1ミリメートル程度の大変薄いナイロンを素材とした布地でできています。
また、パラグライダーの滑空角度に合わせて空気取り入れ口であるエアインテーク面を向けてあり、前進速度が速いほど、ラム圧が(パラグライダーの内圧が)高くなり、ゴム風船のように翼はより強い剛性を持つこととなります。

もうひとつ、パラグライダーの内側からのラム圧の他に、上面(アッパーサーフェス)を流れる風速が早いほどベルヌイの定理による負圧によって揚力が発生しています。キャノピーは、ラインによって下向きに引っ張られているのですが、パイロットの体重+キャノピーの重さの70%位がアッパーサーフェイス上面を揚力によって上向きの引かれているのです。
残りの30%くらいは、パラグライダーの下面(アンダーサーフェス)に当たる正圧で押し上げられています。)
キャノピーはこのラム圧と翼の外側に流れる気流による揚力、数多く引かれているラインからなるパイロットの重さの合成によってパラグライダーの形が強固に形成されているのですが、それを上回る強力な風がキャノピーの上面から当たる事によって潰れが発生するのです。

話は少し変わりますが、強風の時に飛行すると必ず翼が潰れるかというと、その答えはNOです。
風が強くても、安定大気が移動している状態であればパラグライダーも安定しています。
すなわち、風が強くなるほど、たとえば地表にある起伏や障害物による風の乱流が引き起こされ(それは、速い川の流れで、川底の起伏に影響されて大きな波ができている事に似ています)その乱れた風が、キャノピーの上面から当たったり、風速の変化によるピッチングやヨーイングなどの挙動の中でパラグライダーに上から当たる風があれば、そのとき翼は潰れるのです。
それは風があまり無い場合でも、太陽による熱で暖められた地面から沸き上がてくる空気や、冷たい空気が急激に落ちてくるダウンバーストのような上下する気流の乱れに遭遇して、パラグライダーに上からの風があたり、潰れる事もまれにあるのです。

このようなときにはパイロットの潰れを防止する操縦操作と、潰れからの冷静なコントロールがとても大事です。その日の気流や風向による進入コースの気流を注意深く判断し、適切な操縦技術が必要です。
(ローリング状態で、翼端が内側に巻き込んでくるのは、この理論と少し違います)

その日によっては、上昇気流を目で見つけられる時があります。

縦に延びている入道雲は、まさに地面から始まった上昇気流が目に見える形なのです。
ルスツでも、ほどよい高さで適度な入道雲(積雲)が発生している日があります。入道雲は地面が暖められて上がってくる上昇気流によって逆転層を境にできるのですが、一度出来てしまうと、サーマル源がとぎれてしまっても、自らの気化熱や、太陽からの放射熱によってさらに発達しますから、エネルギーのあるうちは、その積雲の下に上昇気流が入ってきています。

上昇エネルギーのある粒子密度のある入道雲は、真っ白に光っていますが、ある程度下降気流も含み始めた入道雲は、粒子密度が薄くなってネズミ色にくすんでいる事で判断ができます。(ランバートベールの法則)

目安として、雲底から高さが200メートル以上ある入道雲は、近づきすぎると吸い込むエネルギーが大きいので、パラグライダーは要注意です。

ルスツでも僕たちがサーマル雲と言っています真綿状の雲があちこちできる日があります。その下にサーマルブローが入ってきていて、サーマル雲の所まで上昇しているのです。

サーマルを探る

サーマルを感じたら「探ってみる」ことが大事です。わずかでも上昇を感じ、高度に余裕があるなら迷わず探ってみましょう。飛行中に感じた上昇が弱くても探ることが大事です。たとえば無風で毎秒1m沈下する機体が、上昇風で毎秒-0.5~0mの沈下になったら、大きなサーマルがすぐそばにある可能性が高いからです。そういう時に探ってみるパイロットがサーマルにヒットする確率が高くなるのです。(バリオメーターが少ししか鳴らなくても探ってみるのです)
一般的に、キャノピーが持ち上げられた側に上昇帯(サーマルコア)があると考えます。
ごくまれに、キャノピーがサーマルに吸い寄せられる挙動を感じる事もあります。

サーマルの中で旋回上昇します。

サーマルに入ったら、昇降計(バリオメーター)の反応音のタイムラグを考えて、音が一番かん高い所で旋回を開始します。(バリオの音が鳴ってすぐに旋回をするとサーマルからまた出てしまう事が多いです、とくに風上から入っていったときはそうなります)
クロスカントリーなど、追い風の中でサーマルに入ると、アッという間に通りすぎてしまいます。
バリオがなり出したら思い切って片方のブレークコードを引いて旋回を始めます。追い風の速度にもよりますが、バリオで設定しているシンクレートの音色が止まった時点でキャノピーが馬蹄形におれるほどブレークコードを引くパイロットもいるようです。
追い風強風の時には一度サーマルの風下にはずしてしまうとサーマルが斜めに上がってきている事と、パラグライダーは向かい風に対して大きな沈下を伴うので、風上のサーマルに戻るには大きな高度ロスを覚悟しなければなりません。

サーマルの中で旋回を始めたら、上昇気流の一番勢いの有る所が中心になるように、2度3度、旋回しながら合わせて(センタリングして)いきます。
旋回操作は、Uターンでも、360度旋回でも、(アスペクト比のある機体は体重移動をしっかりかけて)ブレークコードを引き、旋回が始まると同時に外側のブレークコードも適度に引いて、沈下の少ない理論的な旋回をします。
(ちなみに高度処理のための旋回は、片方のブレークコードだけを引く事で沈下が早い旋回となって、早く降りられるのです)
先ほども説明しましたが、旋回中は外翼側のブレークコード操作も大事です。
沈下の少ない(サーマルの中での早い上昇)旋回をする為に、両方のブレークコードをさらに引いてキャノピーの迎え角を上げたり、外翼が走りそうになったときの抑えなどを微妙に操作しています。
たとえばサーマルセンタリング中に、180度反対側で一緒に旋回中のパイロットと旋回速度を合わせるときも、両方のブレークコードを微妙に引いて、互いの旋回速度を調整しています。(センタリング中の相手との信頼関係がなければできません)

サーマルコア(中心)の捕まえ方

旋回をしながらサーマルの中心を探すわけですが、その探し方に、いくつかの方法があります。
セールプレーン、(飛行機型の一般的なグライダー)の滑空技術の資料から簡単に説明をします。

①「ベストヘディング法」

旋回中に、一番上昇の強いところを感じ、その方向に旋回をずらしていく方法です。
初期にサーマルの位置を特定するのに有効です。

②「ワーストヘディング法」

旋回中に、上昇の弱いところを感じ、その反対方向に旋回をずらしていく方法です。
サーマルの中で旋回中にコアを探すのに有効です

ベスト・ ・ ・とワースト・ ・ ・は何が違うかというと、サーマルに入る前は、上昇を感じやすいので、ベスト・・・航法を使い、一度サーマルに入ってしまうと沈下を感じやすいので、両方を使い分けるという考えが成り立ちます。また、それぞれを使い分けないと、旋回をずらす方向の軸がずれてしまうということでもあります。

③「サージ法」

旋回中に、上昇を感じたら旋回を緩くし、下降を感じたら旋回をきつくする。安定しないサーマルを探るのに有効です。

これらをそれぞれ使い分けることになっていますが、最初はサージ法の考え方だけでいいでしょう。

サーマルが弱い日もあります

サーマルの状態にもよりますが、やっとステイ(その高さにとどまれる)できそうな上昇帯なら、センタリングを続けてがんばってみましょう。
渋いコンディション(弱い上昇気流)の日はとくに、「下がらなければそれで十分」という考えを持ってアタックします。そのうちだんだん上昇気流が強くなって、とうとう上昇し始める事がよくあるのです。(僕の体験では、5分以上同じところでセンタリングをして、やっと上昇し始めた経験が何度か有ります)
こんな日は、上がりが悪いからと言って、他のサーマルを探しに出てしまうと失敗しやすいのです。渋いコンディションの日は、我慢強く粘って飛ぶ練習がとても大事です。

ルスツでは、ランディングに来るまでの林の中に、昼間の日射しによって熱を蓄えられ、夕方の冷え込みが始まったところで林全体が上昇風を発生する事が時々あります。センタリングをしなくても、大きな範囲で穏やかに上昇します。(アーベントテルミックです)

冬のフライトでも、気温が低く日射しが強い穏やかな風の日には、午前中から広い範囲で林から出る穏やかなサーマルでゆっくり上昇し続ける事があります。

バブルサーマル

その日のコンディションで、サーマルは出ているけれども、荒れていたり、バブルサーマル(コラムサーマルではなく、泡状に上がってくるサーマル)の、多い日ではサーマルセンタリングをしても、なかなか上昇できなかったりします。長く続かないサーマルは、利用するのがむずかしいですが、あきらめず果敢にアタックを続けるなかなか降りてこないパイロットは、見ていて気持ちがいいです。

強いサーマル

バリオメーターで+3~4以上の強いサーマルの中では、一般的に、キャノピーをあまり傾けずに、ていねいにセンタリングをするよりも、サーマルの中心にある、より勢いのある上昇帯で小さく旋回する方が素早く上昇すると言われています。
小さい旋回で上げようとする時は、両方のブレークコードをかなり引きながら理論的な旋回をします。
とても勢いのあるサーマルで上げきった時は、上げきったと思っても、逆転層が弱い日は、そのわずか風下に、さらに上昇気流が始まっていることがあります。イメージとしてはその逆転層から目に見えない入道雲が始まっている事があるのです。いつも頭に入れておいて下さい。

上げきったあとは

その場所にいるのであれば、近くでサーマルで上昇してくるパイロットを観察し続けたりします。
そのパイロットのサーマルの上に入り込んで上昇する事で、いつまでも高度を保っている事ができる事と、さらに高く上げる事ができるかもしれないのです。

観察力を高めましょう。

今使ったサーマルがどこから出て、どういうサーマルだったかを観察します。理論的に観察する事で、他のサーマルもある程度予想できるようになります。
それは、橇負山を離れてクロスカントリーに出た時にイメージが出来るので役立ちます。
そしてまた、ルスツ以外のエリアに出かけた時も、その観察力を応用する事ができるのです。

積雲(入道雲)の強力な吸い込みからの脱出

サーマルで上昇し、雲底まで上げると、積雲の強力な吸い込みからの脱出操作が必要な時があります。キャノピーの両翼端折(Aライザーの一番外側にあるライン1本を逆手に握って折り下げます。さらに引き込むためにラインを革手袋で滑車のように滑らせながら引き下げます)をして、アクセルを踏みます。4本ラインのキャノピーは、2本引きます。
両翼端は、それぞれ3分の1ほど折り、中央に潰れていない部分が3分の1残っているのが基本です。
両翼端折りの状態は、さらに潰れる可能性が少なく、乱気流には強いと言われています。
急いで着陸する降下手段としても、身につけておきましょう。

最近の積雲からの脱出技術としては、ブレークコードを手に1~2回巻いてフルブレークをするディープストールが有りますが、回復操作に理論的な技術が必要です。湖の上などで行うマヌーバーセミナーなどで技術を磨いてからにしましょう。

気象観察によって分かる、サーマルが出る日とその条件

その日の日射しが強く、地面が暖められる事がサーマルの出る条件なのですが、その他の条件が重なる事で、勢いのあるサーマルが発生します。
空気が乾燥している事、(大地が乾燥している事)に加えて、高度による気温差が大きい日は、サーマルが上昇しても、いつまでも周りとの気温差が続くために比較的高い所まで上昇します。
気象庁が発表する、「上空に冷たい寒気団が入り」とか「朝方の気温が低いですが、日中の気温は○○度まで上がります」と言う日は、サーマルがエネルギーを持って上昇していきます。
ルスツでは、着陸場と山頂の温度差が、3度以上ある日は、サーマル上昇も勢いがあります。
時折サーマルブローが入ってくる日が有りますが、時計を見ると、ある程度正確な周期でブローが入いる日がよくあるのです。
とくに大会の時には、その周期を計っておいて「次に僕が出まーす」と宣言をして、ブローが来た瞬間に離陸し、すぐにセンタリングを始めるのです。
(僕はこれでトロフィーを持って帰ったことがあります。そのタイミングでしかトップアウトできないコンディションだったので)

サーマルの他にも、パラグライダーが使えるいくつかの上昇気流があります。

サーマルストリートと言って、大きなサーマル源に始まって積雲ができ、次々と雲が連なっている状態です。積雲の大きさによっては、パラグライダーが近づけないものもありますが、積雲の縦の大きさを観察しながら(吸い込みが強すぎないか)次々と利用して、距離を伸ばします。
ルスツエリアでは、羊蹄山の収束流が起因するクラウドストリートがルスツまで延びてきて、年に何度か利用出来ます。
サーマルによって、サーマルストリートやクラウドストリートの吸い込みを感じるところまで上昇し、吸い込まれてしまわないように外側にはずしたり、吸い込みがある方に戻したりを繰り返して、雲の下を乗り継いでいきます。(両翼端折りのアクセル操作も何度か繰り返します)

サーマルストリートかクラウドストリートか区別が付かないような雲が羊蹄山から大滝の方まで続いている日も有ります。15年ほど前に、ニセコから白老まで走ったハングパイロットがいます。

コンバージェンスと言って、本流の風は西風の日に、そのエリアには東からの海風が入ってきているようなコンディションになる(朝霧や筑波のような)エリアが有ります。互いにぶつかった風が、ほぼ真上に上がっていきます。(一般的に5キロ以上の距離でコンバージェンスラインができます)

海沿いに沿って時折本流とは逆向きになる海風が入っていて、海岸線に沿ってコンバージェンスによるクラウドストリートが続いている事も有ります。
ルスツでは「南の風が、午後には北風に変わり」と予報が出ている日は、前線通過による大きな上昇風帯を利用出来ます。南風でリッジソワリングをしているうちに北風が入り、冷たい風が下に入って、暖かい風がその上を登っていく気流が発生するのです。
飛行中そのままさらに上昇が始まり気流も一般的に500メートル以上は上昇していきます。(前線もコンバージェンスラインの一種です)
この前線通過を利用して、洞爺湖まで行って、まだ高度に余裕があったパイロットがいます。

もう一つは、ウエーブです。風速6メートル以上の風で、山を越えて一度下がった風が、そのはずみで波のように跳ね上がって上昇する風です。イメージとしては、岩を乗り越えた水が、もう一度二度盛り上がるように波ができるのと同じです。まれに地上高100メートルくらいから使える事があって、数百メートルから数千メートルもの上昇があります。パラグライダーの前進速度ほどの風がある時に利用するのですが、ルスツの南風では、貫別(ぬきべつ)岳からのウエーブ。尻別岳で遭遇する軍人山のウエーブ、尻別岳から走った時に遭遇する尻別岳のウエーブなどを時々体験します。ウエーブですから上がるところと下がるところが交互に有り、エネルギーは弱くなりますが、第2波、第3波も感じます。
余談になりますが、滝川の滑空場で西にあるピンネシリ山(1100メートル)のウエーブで、グライダーが5000㍍以上上がった記録があるようです。

コンバージェンス、前線、ウエーブ、ともに上昇風が風の向きのほぼ直角に、かなり長く続いています。センタリングで上昇するのではなく、上昇帯に沿って、(風向きの直角に)飛行をして上昇します。見えない上昇帯の中央を見つけるために、ある程度ジグザグに飛ぶ方法で確認しながら飛ぶのがコツです。(真っ直ぐ飛んでいると、どっちに外してしまったのか分からないのです)
コンバージェンスは海風前線のように海岸線と平行に内陸に入った所に風の向きと直角にできるライン(シアライン)などの他に、沢風が開けた平野で合流してできるまれなケースもあるようです。

危険な回り込みの風に気を付けて下さい

橇負山では「東風のときも西風のときも」南のテイクオフには、ほとんど「回り込んだ風」が入ってきます。肝心なのは、斜面に向かって吹き上げているかどうかで、雲や、吹き流しを確認して本流の風を確認して下さい。

札幌近辺にもスキー場がたくさんありますが、ほとんどが東向きの斜面が多いです。スキー場の山頂付近に上がって飛ぼうとすると、この「だましの風」が吹いてきて、飛び出したとたんに乱気流によってパラグライダーが危険な状態になります。(上空の風の基本は西風がほとんどだからです)

橇負山の収束流(乱気流)

独立峰の後ろには、基本的に収束流があって危険です。イメージとしては、川の流れの中で、岩にぶつかった流れが、その後ろで合流した時の渦巻きです。(ウエーブは、幅を持って山を越えてくる比較的安定した気流です)
南風で尻別岳に向かうときは、橇負山の後ろに有る収束流に気をつけて下さい。十分に高度を取って尻別岳に流している時はよいのですが、橇負山山頂から150メートル以下で尻別岳に流す時は、後方300メートルから1キロメートルが要注意です。
この強い収束流をさけるために、その日の風向きを考えて、橇負山の真後ろに回り込まないルートを選んで下さい。

山の風下の乱気流はルスツの橇負山の後ろだけではありません。南東の風向きでは貫気別岳(ぬきべつだけ、スキー場のイゾラ)方向からの風、西北西の風は、羊蹄山から乱気流が橇負山にある程度吹いてきています。風が息をついて変化し、時折強くなったりしている時は、要注意です。

補足  雲底高度(サーマルの上昇エネルギーの収束高度)の見積り

その日の雲底高度をエマグラムによって見積もる事ができます。
温度と湿旧温度(乾湿温度計の湿っている方の温度)気圧とを測定し、高度(ヘクトパスカル)を縦軸、気温(水に対する飽和水蒸気圧)を横軸とするエマグラムによって見積もる事ができます。
計測方法は、直射日光が当たっていない屋外で、地上1.5メートル程度の高さで測定を行い、大気が安定する午後から計測します。5分から10分おきに温度、湿球温度、気圧、を時間変化でグラフにします。 (乾燥断熱減率-1℃/100㍍ 湿潤断熱減率-0.5~-0.9/100㍍の線を書き込む)
気圧が一定の中で、水分を含んだ空気が徐々に冷却し、飽和水蒸気圧に達する温度で雲底が定まり、その温度を「露天」温度と言います。
十数年前になりますが、滝川の滑空場で滑空する日の毎日、雲底高度を見積もっている事を知りました。(でもこんなの複雑な観測はしていないようですがかなり正確です)

クロスカントリーフライトの練習

ふだんのリッジソアリングの中で、ほどよく高度が取れたら、グランドサーマルを探しに前進しましょう。前に出て、サーマルを探しきれなかったら、またリッジソアリングに戻って上げ直し、何度もサーマルハンティングに出て行きましょう。普段からのそうした練習が、大会や、クロスカントリーフライトの良い練習になるのです。
日頃から予備知識と観察力を持って練習をしておく事で、突然のチャンスに備えます。

クロスカントリーフライトの魅力

グランドサーマルソアリングを含むすべての滑空理論を活用して飛ぶのがクロスカントリーフライトです。(出発前にクロスカントリー飛行計画書(フライトプラン)を出してください)
いつもの橇負山の風景を離れて、どこまで飛んでいけるかの挑戦が始まります。
この時のために今まで積み重ねてきた飛行技術と滑空理論がいよいよ試されるのです。
サーマル源の読み、笹や木の葉の動き、地上の煙や風向きの分かる旗など、上空の上昇気流や下降気流がイメージ出来る雲の動き。時には地上から湧き上がってくる臭いや、上昇風に巻き上げられてくる虫が確認できます。
15分以上前から強い日射しがあたっていたはずの乾いた畑や駐車場、山の裏側1㎞から2㎞ほどにあるはずの上昇するウエーブやその前後の下降気流。川、沢、日陰の斜面や水の張った水田などの下降気流のイメージも大事です。ダウンバースト(強い下降気流)も、そうしたところに落ちてきます。
不意にはまってしまった下降気流をそのまま通過せずに、一度引き返して上げ直す事も、とても大事な判断です。すぐ前を飛んでいるパイロットの沈下状況も含め、地表のどの部分から影響を受けているのか、風上の山を越えてくる山岳波(ウエーブ)のダウンウィンドかもしれない事をイメージし、見極めてルート変更をします。
刻々と変わる地形の流れの中で、瞬時に最適のルートを判断する事がより遠くへ飛行する技術なのです。
大事な事は、降りてしまわない事ですから、たとえ何㎞も遠回りなっても手堅くコース取りをする事、やむをえず沢渡りや、下降気流帯渡りをする時は、一度二度戻って上げ直す事が飛び続けるコツなのです。そして、下降気流の中を少ない沈下で通過する為にアクセルを踏んで短時間で脱出です。

追い風の中と向かい風の飛行

理論的に向かい風でより遠くへ進もうとする時は、アクセルを踏んで、ポーラーカーブの最良滑空比よりもさらに速い速度で飛びます。
反対に、追い風に乗って、より遠くまで進もうとする時は最良滑空比よりも、少しブレークコードを引いて、適度に最良沈下速度寄りの方が良いのです。
ポーラーカーブを図で書くと分かりやすいのですが、例えば追い風でより遠くへ飛ぼうとする時は、対地速度(水平速度)が早い分だけポーラーカーブの位置がそのまま右に移動して書く事になります。
その時の最良滑空比を求めるゼロ点から引いた線の接線が最良滑空比になるのです。
向かい風の時は、対地速度が遅い分だけポーラーカーブがそのまま左にずれてしまいます。
ゼロ点から引いた線の接線が、よりアクセルを踏んだ側になることが分かります。

少し理論が変わりますが、ウエイトを積んだパイロットは、向かい風で、より遠くに飛ぼうとすると有利ですが、追い風では不利になります。
滑空理論で言うと、同じ機体で、翼面加重が重くなった機体は、沈下速度(滑空速度)が速くなるが、滑空比は変わらないからです。

豆知識

地面から見て、対地速度で向かい風とか追い風になる状態でも、いったん離陸したグライダーには、大気速度で考えると、基本的に無風の中で飛んでいる事になります。
風に流されて飛んでいても、向かい風や追い風の影響は無く、同じ飛行速度で飛んでいるのです。
分かりやすい説明をすると、ひとたび離陸した気球が横風に対して無風になる事と同じで、地上から来る気流の乱れを考えず、安定大気が移動する中での理論です。

どこに着陸するかの判断も重要です。着陸場は手堅く慎重に

畑や水田のツリーランは、人とエリアに迷惑を掛けますから、常に低くなったらどこに降ろすかを考えながら飛行します。
(牧草地も肥料を蒔いて牧草を育てています。農家の人にとっては大事な畑です)
とどく範囲の気流の良さそうな着陸場所を探して、手堅く着陸しましょう。
高度があるうちに、仲間に無線を入れて、着陸地点の報告をして下さい。

尻別岳(しりべつだけ)のねらい方

ルスツにおけるクロスカントリーフライトで、一番多いのが尻別岳をトップアウトしてから、どちらかに走る方法です。
その尻別岳をねらうには、東回りではカイト山の南斜面で上げ直してから行くルートと、西回りでは、西斜面でリッジソアリングをして高度を稼いでから一気に尻別岳の中腹に着き、上げ直してトップアウトするのが最もポピュラーです。
最近では、パラグライダーの性能と、パイロットの技術が向上してきましたので、南東の畑のサーマルなどで、一気に尻別岳に行ったり、リッジソアリング中にサーマル雲まで上げきって、難なく尻別岳の上空まで行く事もよくあります。
(尻別岳のパノラマは、すばらしい別世界です。がんばって行ってみよー)

尻別岳の風

尻別岳の風は、橇負山の風と同じではありません。多くの場合は西の原種農場のサーマルや、東のホテル駐車場のサーマルなどが尻別岳に向かって集まっている事が多いです。橇負山のテイクオフは南の強風なのに、尻別岳は西風や東風だったり、日射の関係で午前は東のサーマルが強く、午後は西のサーマルが強く西風になっていたりします。
尻別岳に近づく前に斜面を上がっていく風(木や笹の動き)を観察し、斜面上昇風を効率よく利用しましょう。

尻別岳の南東斜面

尻別岳の南東斜面は、尾根が浅く、日射しのあった午前中は、斜面上昇風がかなり低い所から使えます。前に出て行くと、風と駐車場のサーマルがバレーウィンドに収束してきて、危険なほど強烈なサーマルが出ていたりします。慎重にセンタリングをしましょう。
その日によってコンディションが違いますから、風向とサーマルをイメージして、最適ルートで走ります。
どのルートで走っても緊急着陸場が近くにありますから、最初は練習のつもりで始めましょう。

尻別岳の南西斜面

尻別岳の南西斜面は尾根が深く、比較的近付きやすいといえます。ただし、西斜面に向かって橇負山から直行するには相応の高度を必要とします。また、カイト山の裏側は風がよどんでいて、南よりの風なら、乱気流になっていたり、西っぽい風なら西のLDまで届かない事も考えられますから、低い高度では近づかないようにしましょう。  
尚、日射しのある西風の時は、原種農場の畑からサーマルが上がっていることが有り、尻別岳の西斜面のリッジソワリングよりも少し前に出て、畑のサーマルを探した方が速く上げることが出来ることがよくあります。

ルスツパラグライダースクール校長 
青木章市
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